共通質保証基準(参考和訳)
―アジアにおける大学間交流の質の高い連携促進に向けて―

2025年4月確定

A. 基本原則

中国、韓国、日本の政府間枠組みは、2011年以来、質保証を伴う大学間交流を推進し、成功を収めてきた。この枠組みをアジア全域に拡大するにあたり、参加大学は以下の基本原則を支持するとともに適切に履行することを約束する:

  • 参加大学は、アジアの大学の国際競争力を高め、域内の相互理解や将来にわたる友好関係の基盤となる教育学術交流を促進するとともに、アジアの平和的発展を視野に入れたアジア諸国における大学間国際ネットワークを背景とした高等教育共同体の形成を目指す枠組みの理念に沿って、連携大学と協働して本枠組みの一員として実現に向けて貢献する。
  • 参加大学は、アジアにおける質の高い高等教育を推進する枠組みの理念のもと、各高等教育システムの関連法令に従いつつ、社会の変化に柔軟に対応し、学生の学びの継続性を担保するために適切な体制と各種の支援策を整備したうえで、プログラムを提供することを保証する。
  • 参加大学は、主たるステークホルダーである学生の選択に必要なプログラムに関する情報を提供するとともに、学生中心の原則に従い、学術の厳正性を確保しつつ、学生の利益と関心に沿った教育を提供する。
  • 参加大学は、平等性、公平性、包摂性、多様性及び社会への開放性の原則に最大限配慮する。

B. 基準

参加大学は、アジアにおける国際的な大学間交流プログラムの一員として活動するにあたり、これらの基準を維持し、継続的に満たすよう努める。

  • 1. 目的設定と共有
    1.1 参加大学は、プログラムの目的や育成する人物像、知識・スキル・態度等の期待される学習成果を明確に定め、ステークホルダー間で共有している。また、参加大学は、目的設定の際に期待される社会的影響(インパクト)についても考慮に入れている。
  • 2. 実施体制
    2.1 参加大学間でプログラムの運営体制や学生に対する責任、経費の分担等のプログラムの基本的方針を協定等により書面化している。

    2.2 参加大学は、プログラムの実施・責任体制及び学内関係組織による支援体制を明確にしている。

    2.3 参加大学は、プログラムの関係教職員が相互に協働し、プログラムを効果的かつ持続的に実施するための教学の体制を整備している。

    2.4 参加大学は、プログラムの調整機能を適切に構築し、参加大学間の定期的な連絡調整の仕組みを整備している。
  • 3. カリキュラム
    3.1 参加大学は、協働でプログラムの目的及び期待される学習成果を踏まえて、指導計画を含む適切なカリキュラムを構成している。

    3.2 参加大学間の教員の協働に基づき、参加大学はカリキュラムを確実に提供している。その際に、対面型に加えオンライン型やオンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型を含む多様な教授方法を効果的に用いる準備ができている。

    3.3 参加大学は、授業内容、指導言語、講義方式、単位数、学生の学習量、期待される学習成果、成績評価方法等のカリキュラムや科目に関する詳細な情報を提供している。この情報は、シラバスやその他の補足資料に含まれており、学生が最新の情報を入手できる状態にしている。
  • 4. 学生の受入・派遣
    4.1 参加大学は、プログラムの目的や学生が修得するであろう学習成果を考慮した上で学生受入・派遣の方針を協働で策定・運用しており、参加大学間でバランスのとれた学生の流動性を確保するよう努めている。

    4.2 参加大学は、学生受入・派遣のプロセス(プログラムへの申請資格及び資格の承認を含む)を公平性・透明性に留意しつつ明確に定めており、学生の意思決定のための正確な情報を提供している。
  • 5. 学習・生活支援
    5.1 参加大学は、プログラムの目的・内容を踏まえて、参加大学間で必要な学習支援策及び生活支援策について合意している。また、プログラム参加希望者及び参加者に対して各支援の内容を理解しやすい形で周知している。

    参加大学は、合意した学習支援策を学生に対して適切に提供している。学習支援の例として、TAの配置を含む参加学生に対する指導体制の構築、履修ガイダンスや語学学習の提供、図書館・IT・実験施設等の十分な研究・学習環境の整備が挙げられる。

    5.3 参加大学は、合意した生活支援策を学生に対して適切に提供している。生活支援の例として、経済的支援、住居支援、医療支援、オリエンテーションの実施、カウンセリング、地域とのつながりの支援、リスク管理が挙げられる。

    5.4 参加大学は、プログラム内外の学生・修了者の交流を支援している。
  • 参加大学は、プログラム内外の学生・修了者の交流を支援している。
    6.1 参加大学は、1.1で定めた学習成果の測定方法を適切に設定し、測定結果を参加大学間で適時に共有している。
  • 7. 単位互換・学位の授与
    7.1 参加大学間で各大学の単位制度について相互理解が図られ、単位互換や単位認定の取り決めを交わしている。
    7.2 参加大学間で各大学の成績評価方法と基準を理解している。

    7.3 参加大学は、学生が修得した単位・成績等の学習歴情報を透明性があり理解しやすい形で学生本人や相手大学に遅滞なく提供している。また、参加大学は参加大学間の合意に基づき、適切に学生の学業成績証明書等を管理している。

    7.4 学位授与を伴うプログラムの場合、参加大学は、授与する学位の種類に応じた審査の体制、プロセス及び基準を適切に設定している。特にジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリープログラムにおいては、参加大学間の合意に基づき、基準や審査の体制をプログラムの目的に応じて協働で整備し、適切に運営している。
  • 8. 継続的な質の向上
    8.1 参加大学は、責任を持つ実施主体を定めることを含め、プログラムの質向上の取組を主導するための効果的かつ継続的な内部質保証の体制を整備している。

    8.2 参加大学は、6.1の方法により把握した学生の学習成果に関する情報を踏まえ教学の体制の改善に資する仕組みを整備している。

    8.3 参加大学は、参加大学間の定期会合や、学生、その他のステークホルダーからの意見聴取等の手段を用いて課題を可視化し、プログラムの運営体制の改善策を検討するための内部質保証の手順を整備している。

    8.4 参加大学間で整備した内部質保証の体制・手順が有効に機能している。

    参加大学間で協働して、プログラムの持続可能な運営を担保するための、財政面や人材面を含めた方策を検討する予定がある。

  • [NOTE]
    (備考)本基準は、高等教育及び大学間交流を取り巻く環境の変化に応じて、3~5年ごとに必要に応じて見直し、改定する。



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